Guitar Tone Museum — Permanent Collection

Fender Stratocasterストラトキャスター 年代別トーン常設展

Collection — 収蔵モデル

Fender StratocasterTelecaster / Les Paul — 収蔵準備中

No.06GUIDE

予算から選ぶ

年代別の「入手ガイド」を、価格帯で並べ直したものです。狙う年代が決まっていない場合はこちらから。価格は執筆時点の実勢目安で、状態と時期により大きく動きます。

  1. 01

    年代を決める

    音の好みから年代を絞る。展示と一覧比較で。

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  2. 02

    予算で絞る

    決めた年代を、下の価格帯から現実的な一本に。

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  3. 03

    現物を確かめる

    買う前にシリアルと物証の整合を鑑定で確認。

    鑑定へ →

〜7万円

入門

年代の意匠を最も安く手に入れられる価格帯。材もピックアップも現代の量産仕様だが、メイプル指板とローズ指板の違いやヘッド形状の差は十分に体感できる。最初の1本、あるいは年式違いを気軽に増やしていく用途に向く。

Squier Classic Vibe · CHN/IDN
Squier Classic Vibe '50s Stratocaster
5〜7万円 目安

50sルックの入門定番。メイプル指板の質感を最安で体験できる。

Fender Japan · JPN
Fender Japan ST57(中古)
5〜12万円 目安

生産終了済みで中古のみだが、日本では最も見つけやすい50s仕様。アルダー/バスウッドの個体が多く、アッシュは上位グレードや白系仕上げに見られる。

Squier Classic Vibe · CHN/IDN
Squier Classic Vibe '60s Stratocaster
5〜7万円 目安

60sルックの入門枠。指板Rや意匠で雰囲気を再現。

Fender Japan · JPN
Fender Japan ST62(中古)
5〜12万円 目安

ローズ指板60s仕様の国内定番。流通量が多く状態と価格の選択肢が広い。初期のJV/SQシリアル個体は別格の評価。

Squier Classic Vibe · CHN/IDN
Squier Classic Vibe '70s Stratocaster
5〜7万円 目安

70sルックの入門枠。ブラック+メイプルの定番配色が人気。

Fender Japan · JPN
Fender Japan ST72(中古)
5〜12万円 目安

ラージヘッド70s仕様の国内定番。ブレットロッド・3ボルトまで再現した年式もある。中古のみ。

7〜15万円

実用

仕様が年代準拠になり、ピックアップも年式に合わせたものが載る。中古のFender Japanもこの帯。長く使う1本として現実的な選択肢で、費用対効果はここが最も高い。

Vintera II · MEX
Vintera II 50s Stratocaster
13〜18万円 目安

アルダー+1Pメイプル、年代準拠ヴィンテージスタイルPU。実用のコスパ枠。

Made in Japan Traditional · JPN
MIJ Traditional 50s Stratocaster
10〜15万円 目安

日本製の高精度な50s意匠。軽量個体が多く扱いやすい。

Vintera II · MEX
Vintera II 60s Stratocaster
13〜18万円 目安

ローズ指板の60s仕様。カスタムカラー系の彩りも楽しめる。

Made in Japan Traditional · JPN
MIJ Traditional 60s Stratocaster
10〜15万円 目安

60s意匠の日本製定番。ローズ指板の甘さを手頃に。

Artist Series · MEX
Jimi Hendrix Stratocaster
12〜17万円 目安

'68風ラージヘッド+貼りメイプルの意匠をリバースヘッドで。CBS初期の空気を量産で味わえる希少枠。

Vintera II · MEX
Vintera II 70s Stratocaster
13〜18万円 目安

ラージヘッド70s意匠のコスパ枠。ハードロック/ファンク映え。

Made in Japan Traditional · JPN
MIJ Traditional 70s Stratocaster
10〜15万円 目安

70s意匠の日本製。ラージヘッド+メイプルの見た目を手頃に。

15〜30万円

本格

量産機として再現度が一段上がる領域。ニトロセルロースラッカーや年式専用設計のピックアップなど、音に効く部分が当時準拠になる。

American Vintage II · USA
American Vintage II 1957
28〜38万円 目安

ニトロラッカー/Pure Vintage '57 PU/スチールブロック——量産では最高水準の'57再現。

American Vintage II · USA
American Vintage II 1961
28〜38万円 目安

スラブローズ指板+Pure Vintage '61 PU+ニトロ。プリCBS円熟期の量産最高再現。

American Vintage II · USA
American Vintage II 1973
28〜38万円 目安

3ボルト+ブレットロッドまで再現した珍しい70s量産リイシュー。

30万円〜

再現の最高峰

カスタムショップ。工法・材の選定まで当時を踏襲し、史実仕様との差は実質「経年(枯れ)の有無」だけになる。ここまで来ると、実ヴィンテージの相場と比較する段階に入る。

Custom Shop Time Machine · USA
Time Machine '55〜'56系
60万円〜 目安

'54〜'56仕様(アッシュ+1Pメイプル)の量産リイシューは希少で、実質CSが入手経路。ニトロ・手巻き系PU・スチールブロック。

Custom Shop Time Machine · USA
Time Machine '57〜'58系
60万円〜 目安

Relic/NOS/CCの3仕上げ。'57 Vシェイプ再現の定番年式。

Custom Shop Time Machine · USA
Time Machine '59〜'64系
60万円〜 目安

スラブ〜ラウンド貼り各年式が揃うCSの主戦場。SRV系の音の再現もここ。

Custom Shop Time Machine · USA
Time Machine '65〜'69系
60万円〜 目安

'69系はヘンドリックス人気で定番化。CBS初期の量産リイシューは少なく、CSが中心。

Vintage

実ヴィンテージ — 相場は個体次第

当時の個体は、年式・オリジナル度・状態で価格が桁ひとつ変わるため、予算帯に並べていません。同じ年式でもパーツが交換されていれば評価は大きく下がり、逆にオールオリジナルの良個体には別の相場が付きます。買う前に「鑑定」で年式と証拠の整合を確認し、下の購入チェックに目を通すことをおすすめします。

買う前に現物で確かめること

中古個体の購入で、実際に手に取って確認すべき点です。重要度の高いものから並べています。年式そのものの整合は「鑑定」で確認できます。

ここに書いたことを全部見れば偽物を見抜ける、という話ではありません。当時の「正解」は年代や工場の作業でぶれ、判断には同年代の確実な個体を数多く見た経験が要ります。高額な個体ほど、信頼できる専門店を通すことに価値があります。

見る

リフィニッシュの痕跡

重要

塗装が本来どこまで回り込むかを、ネックポケットの中、ピックガードの下、コントロール/トレモロキャビティ、ネジ穴の内側といった普段は見えない場所で確認する。ピックガードやネックプレートに隠れていた部分と、露出していた部分とで退色の差が出ているかも手掛かりになる。ただし「当時の正解」は年代や工場の作業でぶれ、オリジナルでも塗料の回り方は揃わない。同年代の確実なオリジナル個体を数多く見ている目が前提になる領域で、写真と文章だけで判定できるものではない。ブラックライトで蛍光の差を見る方法も使われるが、下地や経年、部分補修で見え方が変わり決定打にはならない。

⚠ 注意すべき兆候: ネジ穴の内側やキャビティの奥まで新しい塗料が入り込んでいる。木部と塗膜の境目にマスキングの段差がある。塗装だけ艶やかで、パーツやネジの汚れ方と釣り合わない。

木部のクラック・打痕・修理跡

重要

ネックポケットの周囲、ジャックプレートの周り、ストラップピンの根元、トレモロキャビティの薄い部分は割れやすい。塗膜だけの細かいひび(ウェザーチェック)と、木部まで達したクラックは分けて考える。ネック裏やヘッド裏に周囲と艶や質感の違う帯があれば、折れや欠けの補修跡を疑う。修理跡があること自体は必ずしも減点ではないが価格には強く効くので、申告されているかどうかが問題になる。

⚠ 注意すべき兆候: ネック裏・ヘッド裏の一部だけ塗装の質感が違う。ジョイント部のネジ穴周りが浮いている、または木が痩せてネジが利いていない。

ネックの反りとトラスロッドの残り代

重要

1フレットと、ネックがボディに入る付近のフレットを同時に押さえ、中間のフレットとの隙間で順反りの量を見る。ねじれとハイ起きは指板を横から光にかざす。同時に確かめたいのがトラスロッドの調整代で、締め切っているのに順反りが残る個体はその後の調整余地がない。調整箇所は'71年頃を境に変わり、それ以前はヒール側にナットがあってネックを外さないと回せず、以降のブレットロッドはヘッド側で回せる。移行の年には両方の個体が残るため、年式ではなく現物で確かめること。いずれにせよ店の許可なく自分で回さないこと。

⚠ 注意すべき兆候: ロッドが締め切りで反りが残る。回しても手応えだけで反りが動かない。ナットの溝がなめている、または錆で固着している。

パーツのオリジナル度

重要

ポット側面のEIAコードは年代を絞る手掛かりになる。先頭3桁がメーカー、残りが製造年週で、7桁なら年2桁+週2桁、6桁なら年1桁+週2桁のため10年単位の取り違えが起こり得る。分かるのはそのポットがいつ作られたかまでで、ギターの完成はその後になり、しかもポットは最も交換されやすい部品でもある。ピックアップのボビンと巻き線、ペグの刻印、サドルの刻印、ネジ、コンデンサ、配線材も一つずつ見る。電装や消耗品の交換自体は珍しくないので、価格に見合うかどうかの判断材料として、どこが非オリジナルかを列挙しておく。パーツが揃っていることはオリジナルの証明にはならない — パーツは後からでも集められる。

⚠ 注意すべき兆候: 「オールオリジナル」とされているのに、ハンダの色や量がポットごとにばらついている、あるいは明らかに新しい。

ネックとボディの年式の整合

重要

ネックのヒール裏には日付のスタンプや鉛筆書き(ネックデイト)があり、ボディ側もネックポケットの中やピックガード裏に日付が入っていることがある。ただし'60年代前半のように日付を省いた個体が多いとされる時期があり、退色やサンディングで消えることもあるため、無いこと自体は不審の証拠にならない。読める場合でも、ネックデイト・ポットコード・シリアルの示す時期が1〜2年ずれるのは当時の在庫運用では起こり得る。問題になるのは年代をまたぐような大きなずれで、その場合は別個体のネックとボディを組んだもの(いわゆるニコイチ)を疑う。塗装の摩耗や日焼けの出方がネックとボディで噛み合っているかも併せて見る。

⚠ 注意すべき兆候: ネックデイトとポットコードが年代をまたいで大きく食い違う。ヒール裏の摩耗とポケット側の摩耗が対応していない。

フレットの残量とすり合わせ履歴

確認

弦の当たる位置が平らに凹んでいないか、ローポジションと高音側で減り方に差がないかを見る。ヴィンテージ期のフレットは現行機の標準より細めで背も低い個体が多く、すり合わせを重ねていれば残量は乏しくなる。リフレット済みならオリジナルフレットではなくなる代わりに実用上は安心という取引になる。指板の削り込み具合とフレット端の処理も併せて見る。

⚠ 注意すべき兆候: 残量がないのにトラスロッドの調整代もない。ハイポジションだけ音が詰まる。近い将来リフレットが必要になる個体は、その工賃を織り込んで値段を見る(費用は店と仕様で幅があるので、買う前に見積もりを取っておくとよい)。

ネックポケットの隙間とシム

確認

弦を張った状態でネックとポケットの間に不自然な隙間や段差がないか、ジョイントプレートのネジが均等に効いているかを見る。シム(木片や紙片)が挟まっていること自体は当時の工場でも行われたとされる角度調整で、必ずしも欠点ではない。問題になるのは、極端に厚いシムで無理を吸収している場合と、ポケットを削って別のネックを合わせた痕がある場合。'71年頃からの3ボルト期はマイクロティルトで仕込み角を調整する構造なので、そもそも設計思想が違う点も踏まえて見る。

⚠ 注意すべき兆候: ポケットの木口に新しい削り跡がある。ネック側とポケット側で汚れや日焼けの境界が噛み合わない。

重量

参考

必ず実測して数値を控える。50〜60年代の個体はおおむね3kg台、70年代のノーザンアッシュには4kgを超えるものも珍しくない、といった傾向は語られるが、いずれも目安であって基準ではない。同年代・同仕様でも1kg近い開きが出るほど個体差が大きく、レンジから外れることが不審の証拠になるわけではない。重い個体が悪いわけでもなく、重量差は本館の帯域モデルでも工法係数の一部として扱っている。数値そのものより、立って構えて何時間弾けるかで判断する。

弾く

電装のガリ・断線・ピックアップの導通

重要

アンプに繋ぎ、セレクターを全ポジション、ボリュームとトーンをフルストロークで回してノイズと音切れを確かめる。5ウェイスイッチの標準化は1977年とされ、それ以前の純正は3ウェイなので、ハーフトーンがクリックで出ないこと自体は異常ではない(逆に、旧年代の個体が5ウェイになっている例は交換として非常に多い)。ケーブルを軽く揺すってジャックの接触を、ピックガードを軽く押してハンダの浮きを見る。テスターが使えるなら各ピックアップの直流抵抗値(DCR)を測る。ただしDCRは巻き線の規模の目安にすぎず測定時の温度でも動くため、資料の数値と多少違う程度で不良と判断しない。

⚠ 注意すべき兆候: 特定のピックアップだけ音が出ない、極端に音量が小さい。断線やコイル不良の疑いがあり、ヴィンテージピックアップの巻き直しはオリジナル性を大きく損なう。

生鳴りと弾き心地

確認

アンプに繋ぐ前に、全フレットを一音ずつ鳴らしてビビりとデッドポイントを確かめる。ネックグリップは誕生期の太いUから'55〜'57年頃のV、'58年頃以降の扁平なDへ移るとされるが、当時のネックは最終的な削りが手作業で個体差が大きく、年式から握りは決まらない。優劣ではなく手との相性の問題なので、年式表ではなく実際に握った印象で選ぶ。ヴィンテージ期の指板Rは7.25インチというきつい丸みで、弦高を下げるとハイポジションのチョーキングで音が詰まりやすい。これは仕様であって不良とは限らない。オクターブ調整の余地とサドルの高さ位置も見る。サドルが上がりきっている、あるいは下がりきっている個体は、ネックの仕込み角に無理がある可能性がある。

トレモロとチューニングの保持

参考

アームを軽く使ってチューニングが戻るか、ナット溝で弦が引っかからないか、ペグにガタがないかを見る。スプリングハンガーのネジ穴が広がっていないかも確認する。イナーシャブロックは初期のスチールからCBS後期にダイキャストへ変わったとされるが、時期の説明は資料によって幅がある。ブロックやサドルの交換は定番の改造なので、非オリジナルであること自体は驚くに値しない。年代の証拠としては弱い部品と考え、価格に見合うかどうかの材料として扱う。

聞く・書類

返品・保証の条件

重要

中古・ヴィンテージは現状渡しが原則の店もある。初期不良の対応期間、返品の可否と期限、送料や手数料の負担、通販なら到着後に確認できる猶予期間、調整やリフレットが保証に含まれるかを購入前に確かめる。遠方から買う場合、この条件はチェック項目そのものより効いてくることがある。

⚠ 注意すべき兆候: 高額なのに返品条件が口頭でしか示されない。

販売店の説明を書面に残す

重要

「オールオリジナル」「リフィニッシュなし」「◯年製」といった説明は、納品書や売買契約書、メールなど後から参照できる形で残してもらう。交換されているパーツがあるなら、その一覧も書いてもらう。後になって相違が判明したとき、交渉の根拠になるのは書面だけである。

⚠ 注意すべき兆候: 書面に残すことを渋られる。口頭では断定するのに、書面では表現が急に曖昧になる。

個人売買のリスク

重要

フリマアプリ、オークション、SNSでの個人間取引は、現物確認が難しく、問題があったときの保護も弱い。ヴィンテージ価格帯では一度の取引で大きな金額が動くため、対面での受け渡し、決済手段の安全性、輸送事故の補償上限を事前に詰めておく。出品者に悪意がなくても、本人がリフィニッシュや交換に気づいていないというケースは普通にある。

⚠ 注意すべき兆候: 写真が少なく、キャビティやネックポケットの追加写真を求めても出てこない。相場から大きく安い。

最終判断は専門家に委ねる

重要

ここまでの項目は疑う入口であって鑑定手順ではない。オリジナルかリフィニッシュか、ネックとボディが元から組だったかといった判断は、同年代の確実な個体を数多く見てきた専門店やリペアマンの領域であり、チェックリストで代替できるものではない。高額な個体ほど、購入前に第三者の目を入れる価値がある。このリストで偽物を見抜けると考えないこと。

付属品と書類

確認

オリジナルケース(年代で形状と内装色が違う)、当時のタグ、トレモロアームや工具、過去の販売記録、修理履歴の有無を聞く。COA(証明書)はカスタムショップなどメーカーが発行するもので、ヴィンテージ個体にメーカー純正のCOAは基本的に存在しない。第三者の鑑定書が付く場合は、誰が発行し、何をどこまで述べているのかを読む。書類がその個体を指していることの確認も要る。

⚠ 注意すべき兆候: 「オリジナルケース付き」とされているのに、明らかに年代の合わないケースに入っている。

買った後の取り扱い

古い個体には、現行品では起きない壊れ方があります。特にニトロセルロースラッカーの扱いは、知らないと数日で取り返しがつかなくなります。

ラッカー塗装とスタンドのゴム

重要

ニトロセルロースラッカーは、可塑剤を含むゴムや軟質ビニールと接触すると反応し、塗膜が溶けて曇る、べたつく、色が移るといった変化を起こす。ギタースタンドのアーム、ストラップの滑り止め、ケース内装、机の上のマットが定番の事故現場である。接触部を布で覆うか、ラッカー対応を明記した製品を使う。短期間で起きることもあり、一度溶けた塗膜は元には戻らない。70年代の厚いポリエステル塗装は比較的耐性があるとされるが、無条件に安全というわけではない。

湿度管理

重要

目安は40〜60%。乾燥するとネックが動き、指板が痩せてフレットの端が飛び出し、木部や塗装にクラックが入る。多湿では膨らみ、金属パーツの錆、接着部の劣化が出る。日本では冬の暖房と梅雨の両方が問題になるため、ケース内に湿度計と調整剤を入れて数字で見るのが確実。乾ききった個体を一気に加湿すると急な膨張で別の不具合を招くので、戻すときは緩やかに。

温度変化と急な移動

重要

冬に外から持ち帰ったギターをすぐケースから出すと、結露と急激な収縮膨張で塗膜に細かいひび(ウェザーチェック)が入ることがある。ケースに入れたまま最低でも30分から1時間、寒暖差が大きいときはもっと長く室温に馴染ませてから開ける。夏場の車内放置は最悪で、塗装や接着が変質する温度まで簡単に上がる。ウェザーチェックは年代物の風合いとして歓迎されることもあるが、意図せず一度に入れてしまうのとは話が別である。

クリーニング剤の選び方

重要

ラッカー塗装では避けるべきものがはっきりしている。アルコール類、強い溶剤、シリコンを含む艶出し(後の塗装補修を妨げる)、研磨剤入りのコンパウンド(薄い塗膜を削り切る)、成分表示のない汎用ポリッシュ。基本は乾いた柔らかい布で拭くだけで足り、それ以上が必要なときは「ラッカー対応」と明記された製品を、目立たない場所で試してから使う。ローズ指板の乾燥対策のオイルは弦交換時に少量で、塗装されたメイプル指板には基本的に不要。

輸送・郵送時の注意

重要

ハードケースに入れ、ヘッドの下に緩衝材を入れてケース内でネックが動かないようにし、弦は少し緩める。ケースごと箱に入れる二重梱包が基本。宅配便の補償には上限があり(多くの宅配便で30万円程度だが、業者と契約により異なる)、ヴィンテージの実勢価格には届かないことが多い。ケースを箱に入れると3辺の合計がサイズ上限を超え、通常の宅配便では引き受けてもらえない場合もある。補償額と条件、サイズの可否を事前に確認し、必要なら楽器輸送を扱う業者や対面での受け渡しを検討する。

国際輸送とワシントン条約

重要

ローズ指板期の個体に使われたとされるブラジリアンローズウッド(ハカランダ)はワシントン条約(CITES)附属書Iの規制対象で、国境をまたぐ移動には証明書類が要る。附属書IIに載るローズウッド類については完成した楽器を規制の対象外とする扱いがあるとされるが、附属書Iのハカランダはその緩和の対象ではない。海外から買う、海外へ持ち出す、修理のために送るといった場合、書類が揃わないと差し止めや没収の可能性がある。そもそも指板材がハカランダかどうかの判別自体が難しく、扱いは材の種類と時期で変わるため、個人で判断できる領域ではない。該当しそうなら、必ず事前に専門業者や所管の窓口に確認すること。

汗と金属パーツの腐食

汗に含まれる塩分と酸は、弦、サドル、ネジ、ペグ、そしてピックアップのポールピース(フェンダーのシングルコイルではアルニコ磁石そのもの)を腐食させる。汗の質は個人差が大きく、同じ扱いでも数か月でメッキが荒れる人がいる。演奏後に乾いた布で弦、ブリッジ周り、ネック裏を拭くだけで寿命が変わる。ポールピースの腐食は、膨張が巻き線を圧迫して断線の一因になるとも言われ、ヴィンテージピックアップでは軽視できない。

保管時に弦を緩めるか

専門家の間でも意見が割れており、正解が一つに決まっていない論点である。緩める側の論拠は、長期間かかり続ける張力がネックやジョイント部に蓄積すること。緩めない側の論拠は、ギターは張力とトラスロッドが釣り合った状態で安定しており、抜くと逆方向に動いて結局は再調整が要ること、そして張ったり緩めたりの往復のほうが木を動かすということ。判断材料は、保管期間(数日なら緩める意味は薄い)、環境の温湿度が安定しているか、その個体が反りやすいかの3点になる。全部緩めきる必要はないという点は比較的合意されており、長期保管では半音から一音下げる程度の折衷が現実的とされる。どちらの説を採るにせよ、放置せず定期的に状態を見ることのほうが効く。

長期保管の姿勢と置き場所

ハードケースに入れ、直射日光、エアコンの風、外壁に面した壁際、床暖房の上を避ける。ケースは水平に寝かせるか、倒れない場所に立てる。壁掛けハンガーは日常的な使用では問題ないとされるが、長期保管なら環境の安定するケース内が無難である。緩衝材をネック周りに詰めすぎると、かえって余計な力がかかる。数か月しまいっぱなしにせず、ときどき出して反りと湿度を見る。

オリジナルパーツの保管と記録

改造するなら元に戻せる範囲に留める。ザグリの追加、ピックガードへの穴あけ、ボディへのネジ穴追加は元に戻せず、価値も戻らない。外したオリジナルパーツは捨てずに保管し、購入時の状態と配線を写真に残しておく。次に手放すときも、修理に出すときも、この記録が効いてくる。