係数を足しただけのもの
帯域カーブは8つの係数の和です。素の傾向・ボディ材・指板・ブリッジ・ピックアップ・塗装・工法・回路。それぞれが9つの周波数帯(60Hz〜8kHz)に相対dBの値を持ち、足し合わせて±6dBで頭打ちにしたものが、画面に出ている1本のカーブです。
Tone Museum — Permanent Collection
Fender StratocasterTelecaster / Les Paul — 収蔵準備中
この館の数値と記述が、どこから来ているか。性質の違う3種類が混ざっているので、混ぜたまま「参考程度に」と断らず、分けて名乗ります。確かなところと確かでないところの区別を、そのままお渡しするためです。
帯域カーブの数値が、どこから来ているか。
帯域カーブは8つの係数の和です。素の傾向・ボディ材・指板・ブリッジ・ピックアップ・塗装・工法・回路。それぞれが9つの周波数帯(60Hz〜8kHz)に相対dBの値を持ち、足し合わせて±6dBで頭打ちにしたものが、画面に出ている1本のカーブです。
「アルダーは中域に芯がある」「スワンプアッシュは中域が軽く凹む」——流通と修理と演奏の現場で共有されてきた言い方を、数値に置き換えたものが係数です。測定して決めた値ではなく、文献で確定した値でもありません。同じ通説を別の人が係数化すれば、別の数字になります。
「HIGHはかなり強め」と書けば断定を避けられますが、そう書いた瞬間に、8つの係数を足しているという事実が読み手から見えなくなります。数値であることは精度の主張ではなく、どの要素が効いているかを分解して見せられるという構造の側の主張です。ボディ材や指板を差し替えるとカーブが動くのは、その構造がそのまま操作できるからです。
独自の指数にすれば「測定値に見える」問題は避けられますが、代わりに読み手が意味を掴めなくなります。dBはイコライザで日常的に触れている単位で、「3kHzが+1.5dB」は手元のアンプで再現できます。読み替えの利く単位であることを優先しました。
個体差、経年、弦、アンプ、弾き手。同じ年式の2本でも、この館のカーブは同じ1本しか出しません。木の鳴りやネックの弾き心地のように、帯域では表せない差もあります。試聴で同じ年代を2つの音源で聴き比べると差が残りますが、それが帯域だけでは埋まらない部分です。
年と仕様変更を、どこまで確定できるか。
ヴィンテージFenderの仕様変更に、社内文書に裏付けられた切り替え日はほとんど残っていません。既存の部材を使い切ってから次へ移る運用だったため、移行は数か月から1年をかけて段階的に進み、過渡期の個体では新旧が混在します。年表の各項目が示しているのは、その年のおおよその位置だけです。
「確実」は会社の出来事など動かない事実にだけ与えています。仕様変更はほぼすべて「おおよそ」か「諸説あり」で、特に「諸説あり」の項目は資料によって1〜2年の幅で食い違います。断定して見せないことを、表示の側でも守っています。
シリアル・ポットコード・物証から年を絞るとき、範囲を狭めれば当たったように見えますが、過渡期の正常な個体を「矛盾あり」と誤判定する害のほうが大きい。絞り込みの甘さより取りこぼしを避ける側に倒しています。2つの年の間の変更を抜き出すときに両端の年を含めるのも同じ理由です。
鑑定の価値は年式を当てることより、証拠の食い違いを指摘することにあります。裏を返せば、よくできた組み替え個体は矛盾を出しません。高額な個体ほど、専門店・専門家の判断を仰ぐ価値があります。
推定と実測を、混ぜずに共存させる。
収蔵する全26項の係数のうち、実測0項・オーナー申告0項。実測はまだ1項もありません。だからいまの画面には出所の印が1つも出ていません。
推定値・実測値・オーナー申告値の3種類で、各数値の由来を持たせています。印の付いていない数値はすべて推定です。推定側に印を付けないのは、「印が無い=推定」という読み方を成立させるためで、印が現れたときにそれが目立つようにするためでもあります。
合成カーブは最も弱い項に丸めて名乗ります。8項のうち2項が実測になっても「推定合成値」のままです。係数の一部が実測になっても、係数の和が実測になるわけではないからです。実測された項は括弧内に名前で添えます(「n項中m項」と数では言いません——項ごとの寄与は一桁違うので、数で言うと合成値の精度が上がったように読まれます)。
測定者・サンプル数・中央値・標準偏差・測定手法。何をどう測ったのか分からない実測値は、推定値より危険です。あわせて、置き換える前の推定値も残します。館の推定がどれだけ当たっていたかを来館者が検証できることが、精度を偽装しないための最大の歯止めになります。
実機で録音した音に「表示中のカーブ − その録音個体自身のカーブ」の差分だけをEQで当てています。絶対カーブを当てないのは、ニュートラルな音源が存在しないからです(どんなギターにもその個体の性格が焼き付いています)。「原音」に切り替えるとEQがゼロになり、加工前の録音がそのまま鳴ります。嘘のない原点をいつでも確かめられる状態にしてあります。
できるのに、しないと決めたこと。
手引き(購入)から鑑定へは進めますが、鑑定から店舗への送客はしていません。年式の判定に金銭的な利害を持ち込まないためです。判定結果から辿れるのは、その年代の展示だけです。
レビュー・評価・FAQのように、実体が無くても検索結果を飾れる型は出していません。出しているのは、実際に描画しているもの(サイト自体・館内の階層・用語集の全語)だけです。
動画も市場の個体も、検索結果ページへのリンクにしています。個別リンクは対象が削除・売約済みになると死にますが、検索クエリは腐りません。掲載個体と価格は各店舗によるもので、本館は販売に関与していません。
「執筆時点」では、読み手にそれがいつか分かりません。月まで名乗れば読み手が自分で判断でき、次に見直す側にも期限が生まれます。
移行年が確定できないものは年表に確度を添え、断定できない仕様は「〜とされる」と書きます。裏の取れない移行年は、そもそも収録しません。
この館は非公認の個人プロジェクトで、収蔵内容は一人の編集を経ただけのものです。事実の誤り、係数の見立ての甘さ、実測データやオーナーズデータのご提供は、下の奥付にある窓口へお寄せください。訂正した箇所は、置き換える前の値を残したまま反映します。